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相続人を決めるルール応用編

さて、前のページで、相続人を決める基本的なルールや、相続割合について見てきました。

ここではより踏み込んだケース、例えば

などを見ていくことにしましょう。

離婚した夫が亡くなりました。元妻の私に相続権はまったくないのでしょうか? 30年も連れ添ったのですが。

何年連れ添ったかにかかわらず、離婚したかつての配偶者は相続権を持ちません

ただし、離婚相手との間にできた「子」は、財産を受け取る権利を持ちます。
離婚をしようが、子にとって親であることは変わらないからです。

事実婚の夫が亡くなった場合、私は何も受け取れないのでしょうか?

正式な婚姻を結んでいなかった場合、やはり相続権がありません。
本来権利を持っていない人間が財産を受け取るには、故人の遺言が必要です。

しかし相手との間にできた「子」は、認知をされていれば、遺言の有無にかかわらず、財産を受け取る権利を持ちます。 婚姻関係のない相手との子を「非嫡出子」というのですが、扱いは他の子と変わりません

なお、生前に父親から認知を受けられなかった非嫡出子は、父の死後3年以内に認知の訴えを起こすことができます。

平成25年12月5日以前は、非嫡出子の取り分は嫡出子の半分と決められていました。
養子も相続人になれるんですか?

養子も基本的に実子と同じ扱いになります。
ただし正式な養子縁組を結んだ場合に限られます。

再婚相手の連れ子は法的には養子といえません。
ですので養子縁組の手続きをしていなかった場合、権利を持たないことになります。

なお、養子にさらに養子がいるという場合、話が複雑になるのですが、ここでは省略します。
義理の親にも権利はあるのですか?

配偶者の両親が慣例で義父母と呼ばれていたにすぎない場合、法的な親子関係ではないので相続人にはなれません。 一方で、養子縁組をした場合の養親には、相続権があります。

なお、養親にさらに養親がいるという場合、話が複雑になるのですが、ここでは省略します。
養子に出した実の子が亡くなったときは・・?

養子に出したからといって、実親との関係が切れるわけではありません。 ですので相続人になります。

ただし、特別養子という特殊な形での養子縁組があります。
実親と縁を切る形で養子縁組することをいうのですが、この場合の実親には相続権がありません。

もしも身寄りがなく、相続人が誰もいない場合はどうなるんですか?

財産を他人に譲るという遺言があれば、その人が受け取ります。

遺言もなかった場合は、特別縁故者といって、故人と共に暮らしていたり介護をしていた人が、 財産を受け取れる可能性が出てきます。(期限内に家庭裁判所に申請することが必要。)

そういう人もいないのであれば、財産は国のものになります。

勘当して親子の縁を切った息子も、相続人になるのですか?

勘当や縁を切るという行為は法的に意味を持たないので、相続人です。

本来は相続権を持っているはずの人物がその権利を失うとすれば、例えば遺言書を偽造するなど、相続に関する不正を働いたときです。 その場合は、いわば不正行為による失格となります。これを「欠格」といいます。

あるいは被相続人(≒故人)を虐待していたなどの事実があれば、家庭裁判所に申請することで、相続権を失わせることもできます。 これを「廃除」といいます。勘当を法的に行うならこれが近いでしょう。

なお、欠格や廃除で相続人が権利を失った場合でも、その人物に子がいる場合には、その子が代わりに権利を持つ可能性があります。 代襲相続といいます。

相続の放棄

相続権は放棄することもできます。
故人に財産がなくかわりに借金ばかりがあるという場合は、 相続をすると借金を引き継ぐことになるので、放棄をしたい人が多いでしょう。

ここで、「放棄」といっても2種類あることに注意が必要です。↓

「1」は放棄というより辞退といった方がいいものです。
例えば・・

私はもう年だから財産は要らないわ。
子供たちで分けてちょうだい。

といった態度のことです。
財産をもらったって別に困りはしないけれど、さりとて欲しいわけでもないのでみんなで好きに分けてください、というものです。 財産を他の相続人にあげる、とみることもできます。

一方で「2」の完全な放棄はそれとは違い、

迷惑だから私をさっさと相続人から外してくれ。

と強い意思で相続を拒絶することです。
法的に「相続の放棄」という場合、こちらを指します。

その2つにどういう違いがあるんですか?

故人に借金があったときに違いが生じます。 「2」の正式な放棄をしておけば、 債権者・・ようするに借金取りがその人のところへは来ません。 故人の借金と完全に縁が切れているからです。

一方で「1」の「要りません」式の辞退ですと、単なる家族間の取り決めにすぎないわけで、 借金取りには関係ない話となります。法的には自動的に借金を相続していることになるのですから、たとえ辞退をしても借金取りが来るかもしれないと、そういう違いがあります。

借金があるなら正式に放棄しておくべきということですか?

財産よりも借金のほうが多い場合は、放棄が有力な選択肢となります。 財産と借金どちらが多いかわからない場合は、「限定承認」といって、 もしも借金のほうが多かった場合でも財産を超えた分については払いません、と表明する手もあります。

なお、法的な放棄をする場合は、家庭裁判所への申述が必要になります。 相続を知った時から3ヶ月以内に行わなければなりません。

さて話がだいぶ逸れてしまいました。
今は相続人を決めるルールについての話でした。

なぜここで放棄について話をしたかというと、 誰かが財産を正式に放棄することで、 相続人を決めるルールが変わるかもしれないからです。

本来なら相続人であったはずの人物がいなくなるのですから、順位の繰り上がりが起こるかもしれないわけです。 例えば相続権を持つ子(故人の子)が法的な放棄をしたことで、その次の順番にいる親(故人の親)に権利が移ると、そういうことが起こり得ます。

繰り上がりが起こり得る

要するに、放棄した人をいないものとして扱えばいいんですよね?

まぁそうですが、いないものといっても2種類の意味があります。↓

放棄をした人物については、
「2」の最初からいなかったものとして扱う、が正解になります。

その2つの違いがいまいちわからないのですけど・・。

もしも「1」の亡くなっている人のように扱うのであれば、代襲相続が起こります。

おさらいしておきましょう。代襲相続とは、相続権を本来持っている人が既に亡くなっている場合に、その「子」が代わりに権利を引き継ぐというものでした。下の世代へのバトンのリレーです。

権利を持つ者が亡くなっているとき

「子」が代わりに権利を引き継ぐ

しかし相続を放棄した人物については、最初から存在しなかった(相続人ではなかった)ものとして扱われるので、下の世代へのバトンのリレーは起こりません。 この点に注意しましょう。

Point

相続を放棄した人物がいると相続人が変わる可能性がある。 しかし代襲相続は起こらない。

数次相続について

最後に、特殊なケースではありますが、なかなかややこしいルールについてご説明します。 数次相続といわれるものです。

もしもこれが起こるようだと、 これまで説明してきたルールが変わり、相続人の範囲が広がります

具体的にはこうです。
ここに一組の夫婦がいたとします。↓

夫婦

夫の太郎が亡くなりました。↓

夫が亡くなった

遺言書はなく、妻の花子と夫の親族(ここでは兄弟)が相続人となったのですが、↓

2人が受け取るはずだった

財産の取り分を2人で話し合う前に、花子も亡くなってしまいました。↓

妻も亡くなった

財産を受け取るはずだった者が、取り分を決める前に亡くなってしまう。
数次相続が起きる可能性があるのはこのときです。

このとき本来なら関係なかったはずの、妻の花子の親族までが、財産を受け取る権利を持つかもしれません。↓

妻の姉妹にも権利が

というのも最初に夫が亡くなった時点で、相続権というバトンは妻の手に渡ったとみなされます。↓

妻の手に

その後に妻が亡くなったからといって、権利が消滅するわけではありません。 既に妻の財産なのです。↓

亡くなっても権利は消えない

妻の財産については、その死後、妻の親族が相続することになります。 したがって妻の親兄弟が相続人になりうるわけです。↓

妻の親族

花子の親族は花子の夫の親族に、自分たちの取り分を要求します。↓

取り分をください

しかし思い出してください。花子は夫の財産を受け取れることにはなっていたものの、 いくら受け取るのかは決まっていません。それを決める前に、亡くなったのでした。

花子さんの取り分と言われても、いくらなのかわからないよ・・。

その場合は↓

話し合いましょう

ということで、夫の親族と妻の親族とが、本来なら妻がもらえたはずの財産をめぐって、同時に相続に参加することになります。 これが数次相続です。↓

合同チーム結成

相続人が増えればそれだけ話が複雑になりますし、 本来なら無関係だったはずの遠い縁者と財産を分け合うのは、感情的に受け入れづらいところもあるでしょう。

なにかと揉め事になりやすい数次相続ですから、起こらないに越したことはありません。 手続きを完了する前に誰かが亡くなってしまうという事態を避けるために、相続は速やかに済ませるのが良いのです。

Point

事態を複雑にしないために、相続は速やかに。

昔のルールは違う

以上が相続人を決めるルールです。
ここまでおつかれ様でした。

しかし実をいうとこのルールは、現在のルールに過ぎません
法改正によりルールはこれまで幾度も変更されてきました。↓

昔のことなんてどうでもいいでしょう。

と思うかもしれませんが、厄介なことに相続人を決めるルールは、 故人が亡くなったその当時のルールに基づいて決まるのが原則です。 もしも戦前に亡くなった人の相続を今行おうというのであれば、当時の法律に沿って相続人を特定しなければいけないということです。

じゃ当時のルールも全部覚えないといけないんですか?

全て解説するのは大変なのでとりあえずは、

の2つのケースにおいては、今とはルールが結わるかもしれないことを念頭に置き、専門家に相談するなどなさってください。

Point

亡くなってからしばらく経過した方の相続には注意が必要。

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